2/極低温複数チップ実装システム
大規模シリコン量子ビットアレイの高精度制御・高感度読み出しを実現するため、希釈冷凍機内部において量子ビット制御信号の生成および量子ビット動作環境の観測を行う極低温CMOSアナログ回路(AD/DA変換回路など)の開発・製造を行っています。希釈冷凍機には一般に量子ビットを格納する極低温領域に加えて、3-4K程度の低温度領域が存在します。この二つの温度領域に量子ビットおよび量子ビットの制御・読み出しに必要な回路を実装します。特に、量子ビットを格納する領域に主要回路を搭載することで量子ビット制御性と読み出し感度を大幅に改善させ量子ゲート操作精度を向上させる必要がありますが、そのために必要な100mK~4.2Kの温度領域を包含する極低温複数チップ実装システム技術(アナログCMOS回路技術、無線通信含むシグナリング技術、無線給電を含む給電技術、極低温向けマルチチップ実装技術、デバイス・回路シミュレーション技術、トランジェント温度解析技術など)の開発を推進し、課題をクリアしていきたいと考えています。
研究開発課題
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4. 極低温CMOSアナログ回路
本研究開発課題では、二つのテーマを設けています。
極低温CMOSアナログ回路
大規模シリコン量子ビットアレイの高精度制御・高感度読み出しを実現するため、希釈冷凍機内部において量子ビット制御信号の生成および量子ビット動作環境の観測を行う極低温CMOSアナログ回路(AD/DA変換回路など)の開発・製造を行っています。特に、希釈冷凍機には一般に量子ビットを格納する極低温領域に加えて3-4K程度の低温度領域が存在しますが、この3-4K程度の低温度領域に制御用ICを配置し、量子ビットを制御する技術を開発しています。極低温CMOSアナログ回路は、多量子ビットに対応するために多数のチャネルが必要であると同時に、希釈冷凍機内部の限られた面積・電力範囲で動作する必要があるため、回路の小面積化技術、超低消費電力化技術、自己補正技術等が課題です。開発したチップは、日立が研究を進めている極低温制御チップや神戸大学が研究をしている環境モニタリングチップの構成要素として共有し、極低温複数チップ実装による量子コンピュータシステムの開発を加速していきます。
極低温複数チップ実装
量子ビットを格納する極低温パッケージング技術の開発を推進しています。量子ビットは希釈冷凍機内に格納されていますが、希釈冷凍機の限られた面積に効率的に実装でき、かつ、極低温耐性を有するパッケージング構造が求められます。また、熱ノイズによる量子ビットのデコヒーレンスを防ぐため、排熱性の高いパッケージング構造の提案も課題の一つです。現在の先端実装技術を活かし、量子ビットの大規模化を見据えた極低温複数チップ実装システム技術(極低温向けマルチチップ実装技術、デバイス・回路シミュレーション技術、トランジェント温度解析技術など)の開発に向け、課題解決を推進していきます。
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5. 環境モニタリング手法
室温~極低温の複数の温度ステージに機能分割・分散配置されたマルチ量子ビットおよび量子制御・高感度読み出し機構の動作環境をモニタリングする機構、環境モニタリングデータの収集と解析手法、量子ビット制御・読出し動作へのフィードバック機構を開発します。特に、量子ビットの近傍にセンサー回路を搭載することで、、量子ビットのフィデリティに影響を及ぼす温度・ノイズ・信号波形をモニタリングする技術の開発を目指しています。
課題推進者
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永田真